「四時二十分に家を出て、十四枚のふせんを、全部こなすつもりでした。でも、半分は崩れて、いちばん大事な景色だけが、残ったんです」

神奈川県とつかの団地で一人暮らしをする、むらまつさちこ、六十三歳。区役所の窓口で三十八年、人の書類を整える仕事をしてきた女性です。退職して三年、はじめて自分のためだけの旅の計画を、手帳のふせん十四枚に書きました。

十一月の水曜日、始発の電車であたみへ。朝の海、きのみやの大楠、そして温泉と海鮮丼。ところが、お風呂は昼から、海鮮丼の整理券は午後の回で、計画は朝のうちに崩れはじめます。そこで出会ったのは、足湯に通う魚屋のおかみ、ふみえさん。ふせんの外にあった一日が、さちこの「また来よう」を変えていきます。

一人旅の計画を立てすぎてしまう方、予定が崩れると不安になる方、日帰り旅の過ごし方を探している方に、最後までご覧いただきたい物語です。

※物語に出てくる金額、場所、お店、宿は、フィクションとしての設定です。実際の運賃や料金、営業時間は、時期や場所によって異なりますので、お出かけ前にご確認ください。

▼目次
0:00 十四枚のふせんと、始発の電車
3:32 朝のあたみの海
7:18 きのみやじんじゃの大楠と、ふみえさん
12:03 ぎんざ通りと、午後の整理券
15:08 水曜日のお風呂は、お昼から
19:51 駅前の足湯と、一通の手紙
46:39 二週間後の水曜日
49:24 港の食堂の、いちばん端の席